学会の歴史

 

学会の創立

(主として村岡健作氏による)
 
 日本甲殻類学会は1961年(昭和36)4月に発足しました。昭和36年は昭和天皇が還暦をお迎えになられる年にあたり、この還暦を祝して、海洋生物に関し深く研究されている昭和天皇とイギリスの大英博物館の甲殻類部長Isabella Gordon博士との対談を行おうとの計画が持ち上がり、これを読売新聞社が企画実施し、I. Gordon博士(以下博士と略)は同年4月3日に来日されました。
 対談は4月5日で、皇居内の生物学御研究所で相模湾の甲殻類と大英博物館所蔵の甲殻類標本について長時間にわたって行われました。この対談には当時の横 浜国立大学酒井 恒教授、国立科学博物館岡田 要館長、東京水産大学久保伊津男教授の方々も同席されました。同年4月6日には東京有楽町の読売ホ-ルで博 士の甲殻類に関する講演会が行われ会場は盛況を博しました。さらに、その日から東京日本橋の三越デパ-トを会場とし、博士がイギリスより持ってこられた標 本(一部はオランダのL.B.Holthuis博士が博士に託したもの)と日本の大学等の所蔵標本を一堂に集めて、かに・えび類の展覧会が行われました。 この展示で甲殻類の分類や地理的分布などの解説とともに水産学上の意義なども解説され広く普及活動としての役割を担った展示でもありました。
 博士の限られた滞在日程のなかで、博士歓迎の席が学者やその他関係者によって設けられ、その席上で甲殻類を研究する学者や研究者、さらにはアマチュアの 同好者も協力しあって、日本の甲殻類の研究を推進できるような組織をつくることに意見が一致し、ここで初めて学会を設立する気運が熟しました。翌4月7日 には東京都港区麻布十番に同年2月に開館した小田原甲殻類博物館(小田原利光館長)にその主な推進者である小田原利光、酒井 恒、三宅貞祥、久保伊津男、 椎野季雄、岡田 要、福井玉夫、横屋 猷、岩佐正夫、蒲生重男、林 宏、佐野 実等(順不同、敬称略)が一堂に会し、博士を迎えてその発会式を行い、ここ に日本甲殻類学会が正式に誕生しました。学会事務所は小田原甲殻類博物館に置き、会長には酒井 恒教授が選ばれました。
 

学会誌の刊行

 会はまたの名を「エビとカニの会」として、会員は学者ばかりでなく、アマチュアにも広く呼び掛けて、甲殻類に関する諸種の研究を行い会員相携えて甲殻類 学の進歩と普及を図ることを目的としました。会員の機関誌として「甲殻類の研究(英名Researches on Crustacea)」を発行することとし、1963年(昭和38)11月に創刊号が刊行されました。また、会員から会員相互の親睦や消息、意見交換、相 談事項等を載せた会報をとの要望から随時発行の「日本甲殻類学会ニュ-ス」を発行することとし、その編集事務所を神奈川県立博物館(横浜)に置きました。 第1号は1972年(昭和47)11月に刊行されました。
 その後「甲殻類の研究」は第21号まで刊行されましたが、1993年(平成5)に「Crustacean Research」と改題し,第22号(号数は継続)が発行されました。さらに、第25号(1996)からは、これまで報告文は和、英文どちらも掲載して きましたが、これを廃し、欧文(英文)のみを掲載して刊行することになりました。本誌が欧文誌として生まれ変わったことにより、内外の研究者の先駆的な論 文も掲載されるようになり、名実ともに国際誌として国内外で高く評価されています。また、「日本甲殻類学会ニュ-ス」については1990年(平成2)5月 に発行した第13号をもって廃刊とし、新しく「CANCER」と題し、これまでの編集方針を引継いだ和文を主体にした甲殻類に関する総説や学術報告等の記 事のほか、学術的な事柄の紹介や解説、会員相互の連絡などを掲載することとし、その第1号が1991年(平成3)10月に刊行されました。現在、Crustacean ResearchとCANCERは、それぞれ日本甲殻類学会の英文誌と和文誌として、毎年1号刊行されています。


学会の大会

この学会では創立依頼、年1回の大会を開いています。

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Newsletterの刊行

 

この学会の歴史を知るかつて出版されていた貴重なNewsletter誌を、学会員の小西光一さん、村岡健作さんがお持ちでした。このたび、それをスキャンしてオンライン公開させていただくことになりました。下記にリンクを置きます。無料、閲覧自由です。

 
 
 
 

学会の軌跡(年表)

 
  • 1961年4月 日本甲殻類学会誕生. 会長に酒井恒氏就任. 学会事務所を小田原甲殻類博物館に設置
  • 1961年11月 第1回大会を横浜国立大学岩実験所で開催
  • 1963年11月 「甲殻類の研究」創刊号刊行
  • 1971年8月 創立10周年記念大会を東武百貨店(東京池袋)で開き、学会主催のエビ、カニの展覧会を開催
  • 1972年5月 懇話会(第1回)を小田原甲殻類博物館にて開催
  • 1972年11月 「日本甲殻類学会ニュ-ス」創刊号刊行
  • 1973年12月 名誉会員岡田要氏逝去
  • 1980年11月 小田原利光氏により日本甲殻類学会運営の助成を目的として小田原記念甲殻類研究基金を創設
  • 1981年11月 創立20周年記念大会(第19回)を三井ア-バンホテル銀座(東京)で開催
  • 1986年2月 酒井恒会長逝去
  • 1986年11月 三宅貞祥氏が会長就任
  • 1990年5月 「日本甲殻類学会ニュ-ス」13号(最終号)発行
  • 1991年10月 「CANCER」創刊号刊行
  • 1991年11月 創立30周年記念大会(第29回)を東京水産大学で開催. 記念品頒布
  • 1992年4月 学会事務所を小田原甲殻類博物館から東京水産大学に移す
  • 1993年10月 「甲殻類の研究」を「Crustacean Research」と改題し,第22号発行
  • 1996年12月 「Crustacean Research」第25号より欧文誌として発行
  • 1998年9月 三宅貞祥氏会長逝去
  • 1998年11月 鈴木博氏会長就任
  • 1999年8月 評議員選挙、鈴木博氏を会長に選出
  • 2001年11月 創立40周年記念大会(第39回)を東京水産大学で開催. 記念品頒布
  • 2002年8月 評議員選挙. 評議員互選により馬場敬次氏を会長に選出(任期は2003-2005年まで)
  • 2003年11月 学会ホームページを水産大学校のサーバー上で開設
  • 2005年8月 評議員選挙. 評議員互選により馬場敬次氏を会長に選出(任期は2006-2008年まで)
  • 2005年9月 学会ホームページを国立情報学研究所サーバーへ移動(同研究所の学協会情報発信サービスを利用)
  • 2008年8月 評議員選挙、評議員互選により渡邊精一氏を会長に選出(任期は2009-2011年まで)
  • 2009年9月 第47回大会が The Crustacean Society と合同で開催された
  • 2011年8月 評議員選挙、評議員互選により朝倉 彰氏を会長に選出(任期は2012-2014年まで)
  • 2014年9月 第52会大会がInternational Association of Astacologyと合同で開催された
  • 2014年9月 評議員選挙、評議員互選により朝倉彰氏を会長に選出(任期は2015-2017年まで)
  • 2015年3月 学会ホームページのリニューアル
  • 2017年 日本貝類学会との合同シンポジウムが2回開催された(4月:和歌山県白浜。10月:東京大学大気海洋研究所)
  • 2017年10月 評議員選挙、評議員互選により朝倉彰氏を会長に選出(任期は2018-2020年まで)
  • 2020年10月 評議員選挙、評議員互選により朝倉彰氏を会長に選出(任期は2021-2023年まで)