会長挨拶 2017年1月


  日本甲殻類学会第54回大会は、2016年10月22日、23日に鹿児島大学下荒田キャンパスで開催されました。鹿児島大学の鈴木廣志教授をはじめとする実行織委員会の皆様には大変お世話になりました。改めて厚く御礼申し上げます。 この学会では一般発表として17題の口頭発表、26題のポスター発表がありました。

 またこの学会の元副会長で、2014年に名誉会員とさせていただいた水産大学校名誉教授の林健一先生のご功績をたたえ、エビ類(エビ型動物)のシンポジウムが開催されました;Symposium of "Biology of the EBI (prawn, shrimp, and lobster)" dedicated to Dr. Ken-Ichi Hayashi, Emeritus Professor of National Fisheries University.講演者にJung Nyun Kim (National Institute of Fisheries Science, Korea)、Tixiong Cai (National Biodiversity Centre, Republic of Singapore)、Marcy N. Wilder (JIRCAS)らをお迎えして、多角的な角度からエビ類に関するご講演をいただきました。また林先生と研究上のご縁の深いProf. Tin-Yam Chan (Institute of Marine Biology, National Taiwan Ocean University) から学名が林先生に献名されているミノエビ Heterocarpus hayashii の精巧なプラスティック模型が林先生に贈られました。標本はProf. Peter Kee Lin Ng (National University of Singapore)から、林先生へと手渡されました。

また2015年に名誉会員とさせていただいた琉球大学名誉教授の諸喜田茂充先生にご挨拶をいただきました。諸喜田先生は受賞当時は体調を崩されて入院されていましたが、その後闘病生活ののちに退院され、鹿児島大学にお見えになり、健康を回復された諸喜田先生を見て、一同安堵いたしました。なお病床にあられた諸喜田先生の受賞へと結びつけるために、ひとかたならぬお世話になった琉球大学の成瀬貫さん、沖縄県立芸術大学の藤田喜久さんにも、改めて厚く御礼申し上げます。
林先生、諸喜田先生、これからもお元気でお好きな甲殻類の研究が発展していかれることを願ってやみません。

2016年12月15日には、Crustacean Research 最新号の紙媒体が12月15日となりました。今号においては、7本の論文を掲載しております。今号で掲載になりました論文の1つがマスコミで取り上げられ、毎日新聞、読売新聞、朝日新聞、中日新聞、伊勢新聞などで取り上げられました。これは鳥羽水族館が生体展示用に購入したトリカジカに甲殻類のウオノエが寄生しており、これが未記載種であることを当学会会員の齋藤暢宏氏が確認し、ウオノエ類の研究者である山内健生氏と、Elthusa moritakii として新種記載をしたもので、Crustacean Research 2016 Vol.45:59-67に掲載されたものです。齋藤さん、山内さん、おめでとうございます。

また今号の表紙にはヨコエビのPostodius igneus Ariyama, 2011という種類の写真、星野修さんのご好意により使わさていただきました。これがあまりに美麗だったので、発刊されるやいなや、世界中からこの種についての問い合わせがありました。本種は、学会会員のヨコエビ研究者の大阪の有山啓之さんによって、新種記載されたものです。有山さん、星野さん、おめでとうございます。


             

和文誌の Cancer は編集委員会の下村通誉さんをはじめとする方々のご尽力により、年々充実したものが発刊されており、大変に喜ばしい限りです。このほどCancer もまた、Crustacean Research と同様、J-Stageでのオンライン出版が実現しました。

なおCrustacean と Cancer は、CiNii上にあるバックナンバーの論文は解像度が低く実用性問題がありました。それでこの学会ではアーカイブ事業と称して、バックナンバー紙媒体から再スキャンして高解像度のPDFをつくる努力を続けております。これが完成したあかつきには、J-Stageでの公開となります。それにつきましては、公開されましたらニュースとしてこのホームページでお知らせいたします。

これまでこの学会は他の学会との共同事業として、2009年に国際甲殻類学会 The Crustacean Society と、2014年に国際ザリガニ学会 International Association of Astacology との合同大会を開催してきました。そしてその成果として何冊もの本が出版されました。2014年の大会の成果は下記の本としてごく最近、出版されました。

              

そのほかの、これまでの出版物については、下記をご覧ください。

https://csjwebsite4.webnode.jp/%E5%87%BA%E7%89%88%E7%89%A9/

わが学会は新たに2017年に4月15日に、日本貝類学会は合同で国際シンポジウムを開催することとしました。タイトルは  International Symposium on Evolutionary Biology of Parasitic and Symbiotic Relationships between Molluscs and Crustaceans  で、和歌山県西牟婁郡白浜町のホテル シーモアで開催します。ふるってのご参加をお待ちします。

2017年度の甲殻類学会の大会は、千葉県にある東京大学大気海洋研究所で10月7、8日に開催されます。同研究所の猿渡敏郎先生を始めとする実行委員会の方々が準備を進めていただいております。皆様、ふるってご参加ください。

 現在の世界の甲殻類学の趨勢をみますと、アメリカを中心とする地域には The Crustacean Society とそこが発行するJournal of Crustacean Biologyがあり、ヨーロッパにはこの分野の老舗の雑誌ともいえる Crustaceana があります。わが日本甲殻類学会は、Crustacean Researchの発行や大会運営を通じて日本という場に立脚しながらも、アジア、太平洋域における当該分野の情報の発信源となって発展していければと思っております。

    どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

                           朝倉 彰

                            日本甲殻類学会会長

                            京都大学瀬戸臨海実験所