会長挨拶                   

  2018年より3年間、会長を仰せつかりました朝倉彰(京都大学)です。どうぞよろしくお願いいたします。現在の世界の甲殻類学の趨勢をみますと、アメリカを中心とする地域には The Crustacean Society とそこが発行する Journal of Crustacean Biology があり、ヨーロッパにはこの分野の老舗の雑誌ともいえるオランダの Crustaceana があります。わが日本甲殻類学会は、Crustacean Research の発行や大会運営を通じて日本という場に立脚しながらも、アジア、太平洋域における当該分野の情報の発信源となって発展していければと思っております。

2017年は日本甲殻類学会にとって画期的な年でした。日本貝類学会との合同シンポジウムが実現しました。日本貝類学会の大越健嗣会長と私との共通の考え方として、分類群別の学会においては、こうした異なる学会や異分類群との交流というのは、今後の運営と発展をうらなう意味で非常に重要であるというものがあります。

左から日本貝類学会の大越健嗣会長と奥谷喬司名誉会長、そして朝倉


そうした理念のもと、まず第一回目の合同シンポジウムとして、4月に和歌山県の白浜で、日本、アルゼンチン、アメリカ、ニュージランドから講演者をお呼びして International Symposium on Evolutionary Biology of Parasitic and Symbiotic Relationships between Molluscs and Crustaceans と題した国際シンポジウムを開催しました。これは貝類学会の大会の中で開催されたもので、京都大学瀬戸臨海実験所が全面的なバックアップを行い150名の参加者を得て、大盛況でした。この大会委員長を務められ、このシンポジウムの開催の実現にご協力いただいた瀬戸臨海実験所の中野智之先生ならびに大会実行員の皆様に厚く御礼申し上げます。

 シンポジウムの概要はこちらをクリック

 当日の様子はこちらをクリック

 

左から朝倉、Emiliano H. Ocampo (University of Mar del Plata, Argentina), 伊谷行 (高知大学), 後藤龍太郎 (京都大学), Andrew Jeffs (University of Auckland, New Zealand), 安岡法子 (奈良女子大学), 渡部哲也 (西宮市貝類館), Antonio Baeza (Clemson University, USA), 大越健嗣 (日本貝類学会会長)


秋には、東京大学大気海洋研究所でわが学会大会のサテライトシンポジウムとして、第二回目の日本貝類学会との合同シンポジウム「捕食・被食と殻の役割」が、同研究所の狩野泰則先生とそのスタッフによって開催され、90名におよぶ参加者がありました。大成功と言えましょう。開催に携わっていただいた方々、ありがとうございました。

 シンポジウムの概要はこちらをクリック



 日本甲殻類学会第54回(2017年度)大会は、千葉県にある東京大学大気海洋研究所で10月7、8日に開催されました。同研究所の猿渡敏郎先生を始めとする実行委員会の方々には大変お世話になりました。改めて厚く御礼申し上げます。 この学会では一般発表として14題の口頭発表、18題のポスター発表、7題の中学生・高校生によるポスター発表がありました。

 当日の様子はこちらをクリック


 この大会では International Symposium: Frontiers in Crustacean Biology: Asian Perspectives と題されたシンポジウムが開催されました。近年のアジア各国における、めざましい甲殻類学の進展にかんがみ、アジアの最も代表的な甲殻類学者を招聘して、最近の研究成果を講演していただきました。中華人民共和国の青島に本部がある中国甲殻類学会からは、その名誉会長Jianhai Xiangさん(President Emeritus, Chinese Crustacean Society; Chinese Academy of Sciences)をお呼びして同学会についてのご紹介をしていただきました。国際甲殻類学会の次期会長Lim Shirleyさん (President Elect, The Crustacean Society, U.S.A)をお呼びして、シンガポールにおける例をもとに、都市化した地域での研究について紹介していただきました。また甲殻類学における「アジアの巨人」と呼ばれているPeter Kee Lin Ng さん (National University of Singapore)に、アジア域の甲殻類学の「進化」の講演をいただきました。また近年、分子系統学において目覚ましい研究成果をあげられているKa Hou Chuさん (The Chinese University of Hong Kong) 、Tsang Ling Mingさん (National Taiwan Ocean University)か、韓国の十脚甲殻類の幼生研究の第一人者であるHyun Sook Ko さん(Silla University, Korea)をお呼びして講演をしていただきました。これを期に、アジアの全域に甲殻類学の情報ネットワークを構築していきたいと思っております。

 このシンポジウムの概要はこちら

左からJianhai Xiang (中国甲殻類学会名誉会長), Peter Kee Lin Ng (Singapore), Lim Shirley (Singapore), 朝倉, Benny K.K. Chan (Taiwan), Tsang Ling Ming (Taiwan), Ka Hou Chu (Hong Kong)



 またこの大会後の10月9日には日本甲殻類学会公開シンポジウム「アメリカザリガニとの新しい関係」が、すみだ生涯学習センターにおいて開催され、4題の講演と総合討論が行われ、70名の参加があり大盛況でした。

 このシンポジウムの概要はこちら



2017年のもう一つのトピックスとしては、甲殻類の啓蒙本の出版があります。日本甲殻類学会編「エビ・カニの疑問50 みんなが知りたいシリーズ5」成山堂書店。甲殻類に興味がある方は、ぜひこの本を手に取っていただければと思います。

 出版社の詳しい案内はこちら


2017年12月15日には、Crustacean Research 最新号の紙媒体が出版となりました。今号においては、11本の論文を掲載しております。表紙の写真は東京都大島の星野修さんの撮影によるものをご好意により使われていただきました。これはアミ類の一種Mysidella hoshinoi Shimomura, 2016とそれに寄生するアミヤドリムシ類の一種Aspidophryxus izuensis Shimomura, 2017です。これらの種は、北九州市立自然史・歴史(いのちのたび)博物館の下村 通誉先生によって新種記載されたばかりのホットな種です。

 General information of Crustacean Research


和文誌の Cancer は編集委員会の下村通誉さんをはじめとする方々のご尽力により、年々充実したものが発刊されており、大変に喜ばしく思います。

 Cancer の情報はこちら


Crustacean Researchと Cancer は、CiNii上にあるバックナンバーの論文は解像度が低く実用性問題がありました。それでこの学会ではアーカイブ事業と称して、バックナンバー紙媒体から再スキャンして高解像度のPDFをつくる努力を続けており、J-Stage上に、ほぼアップロードが完成しました。ぜひ幅広い皆様にご活用いただければと思います。なおJ-Stageの画面デザインが一新されて、非常にみやすく機能的になりました。ぜひ当該ページに行って見ていただければと思います。

 J-Stage の Crustacean Research のページはこちら

J-Stage の Cancer のページはこちら


         2018年1月1日

                   朝倉 彰

                  日本甲殻類学会会長

                  京都大学瀬戸臨海実験所

                                                               会長のFacebook



                                                                                                             


In light of recent development and internationalization of study of biology of crustaceans in countries in Asian region, it is the best time to start establishing Asian network of crustacean biology. Caricinological Society of Japan will host the network. As the first step to turn the idea into a startup, a symposium of this subject is organized. In this symposium, people who are intensively studying crustacean biology in Asian area are invited to present review of their study.

   
                     Akira Asakura
                     President, Carcinological Society of Japan