会長挨拶                   
 

2020年の年頭にあたり会長として、ご挨拶申し上げます。

2018年度の第56回大会は東海大学清水キャンパスで10月19日から21日に開催され成功裡に終わりました。田中克彦先生、土井航先生を始めとする大会運営委員の方々に厚く御礼申し上げます。17題の口頭発表、18題のポスター発表、4題の中学生・高校生によるポスター発表がありました。それに加え若手の会発足記念のシンポジウム、東海大学との共催シンポジウム、The Chinese University of Hong KongのDr. Ling Ming Tsangをお招きした特別講演が行われるなど、盛りだくさんの大会となりました。学会賞(論文賞)は、齋藤 稔さんを第一著者とする論文(共著者は浜野龍夫さん、中田和義さん)に授与されました。また日本甲殻類学会第3代目の会長である故鈴木博先生(横浜国立大学名誉教授)のご遺族による、学会へのご寄付をもとに創立した海外で行われる国際学会派遣への学生会員への支援基金を、小玉将史さん(東京大学)が受賞されました。

東海大学大会 では「甲殻類と生息場スケールをめぐる新たな視点」と題した 第1回若手の会のシンポジウム(キックオフ集会)が開催されました。


東海大学大会では日本甲殻類学会・東海大学海洋学部共催シンポジウム「駿河湾におけるサクラエビの資源生物学」が開催されました。


第57回大会が、2019年10月19日から20日に、東京海洋大学品川キャンパスで開催されました。浜崎活幸先生、團 重樹先生を始めとする運営委員会の方々に厚く御礼申し上げます。28題の口頭発表、38題のポスター発表、5題の中学生・高校生によるポスター発表があり、参加者数は160名となり、過去最大の大会となりました。2019年度の学会賞(論文賞)は、竹島 利さんを第一著者とする論文(共著者は團 重樹さん,隋 玉明さん,大城将希さん,浜崎活幸さん)に授与されました。またこの大会から35歳以下の若手会員が筆頭演者の口頭発表およびポスター発表に対し、それぞれ発表賞が設けられました。栄えある第1回目の受賞者は邉見由美さんと高倉千紘さんになりました。

またこの学会大会では公開国際シンポジウム「Reproductive Biology of Barnacles」が開催され、Jens T. Hoegさん(University of Copenhagen)、Benny K. Chanさん(Academia Sinica)による基調講演を始めとする多数の発表、参加がありました。主催してくださった吉田隆太さんをはじめとする方々に厚く御礼申し上げます。

2019年は、このほかに2つのシンポジウムを実施しました。「Frontiers in Crustacean Biology: Asian Perspectives: Part II」と題するシンポジウムをThe Crustacean Society Mid-year Meeting (Hong Kong)で5月に実施して多数の参加を得ました。これは2017年に東京大学大気海洋研究所で開催されたこの学会の年次大会の際に行われた同名のシンポジウムの第二回目にあたるものです。


また2019年11月には、台湾の台北で開催されたAsian Marine Biology Symposiumにおいて、邉見由美さん(京都大学)が主たるオーガナイザーとなり、伊谷行さん(高知大学)、Benny K.K. Chanさん(台湾)、Jae-Sang Hongさん(韓国)が協力する形で「Symbiosis and Parasitism in Crustacea: Diversity and Ecological Studies in Asian Region」と題するシンポジウムを開催し成功裡に終わりました。

学会誌においては、国際誌Crustacean Researchは年々、投稿数は増えており、海外からの投稿も一定数を確保できている状況にあり、国際誌として発展し続けております。Online firstの編集体制により、校正作業が終了してから1週間以内にオンライン出版をしております。2019年末に発行の号の表紙はWALK PHOTO ATELIER 代表者の写真家   福井 歩さんのご好意による素晴らしいお写真です(連絡先はこちら https://www.walkphoto.net/)

和文誌Cancerは、このところ急激な投稿数の増加があり、時に170ページを越えるものとなっており、大変ありがたいことです。編集委員会の皆様には大変なご苦労をしていただいているところで、厚く御礼申し上げます。なおCancerにおいては、2019年度号より、情報、会期などを中心とする部分は電子媒体のみとさせていただき、原著論文を中心とするものは紙媒体も印刷することとして、印刷費の節約をはかることにしました。ただしすべてのarticleの電子媒体は、これまで通りJ-Stageの Cancerのページに置いてあります。したがいまして、J-Stageにアクセスすればすべての記事が読めるのは、今まで通りです。

現在の世界の甲殻類学の趨勢をみますと、アメリカを中心とする地域には The Crustacean Society とそこが発行する Journal of Crustacean Biology があり、ヨーロッパにはこの分野の老舗の雑誌ともいえるオランダの Crustaceana があります。わが日本甲殻類学会は、Crustacean Research の発行や大会運営を通じて日本という場に立脚しながらも、アジア、太平洋域における当該分野の情報の発信源となって発展していければと思っております。

アジアの代表的な甲殻類学者を一同に集めたシンポジウム「Frontiers in Crustacean Biology: Asian Perspectives」の第一回目の様子。

From right to left.  Jianhai Xiang (President Emeritus, Chinese Crustacean Society), Peter Kee Lin Ng (Singapore), Lim Shirley (President, The Crustacean Society; Singapore), Akira Asakura (Kyoto University), Benny K.K. Chan (Asian Governor, The Crustacean Society; Taiwan), Tsang Ling Ming (Hong Kong), Ka Hou Chu (Chairperson, The Crustacean Society Mid-Year Meeting 2019; Hong Kong)


 また甲殻類学会の将来を考えますと、こうした分類群ごとの学会というのは、自然史学全体の趨勢や少子化傾向などの要因により運営のあり方についても、検討していかなければならない時期と言えます。そうした潮流の中にあって、近隣の学会との協力関係も不可欠と考えています。この学会はこれまで、The Crustacean Society, International Association of Astacology, Asian Marine Biology Symposium、日本貝類学会などと共同で大会やシンポジウムを行って来ました。また中国甲殻類学会やブラジル甲殻類学会から人をおよびしてシンポジウムをおこなうなどの交流も行ってきました。今後、ますますそうしたことは重要になっていくと考えております。

            2020年1月1日

                  朝倉 彰

                       日本甲殻類学会会長

                       京都大学瀬戸臨海実験所

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